ーペットの財産分割はどうする？家族が揉めないための基本ポイントー

ペットと財産分割の関係を理解しよう

ペットを飼っていると、「もし自分に万一のことがあったら、この子はどうなるのだろう」と不安になる方もいます。相続の場面では、ペットを誰が引き取るかだけでなく、ペットにかかる費用をどう財産分割の中で考えるかも大切なポイントになります。まずはペットと財産分割の基本的な考え方を押さえておきましょう。

ペットは法律上「相続人」にはならない

日本の法律では、ペットはあくまで「物」として扱われ、人と同じように相続人になることはできません。そのため「ペットに財産を相続させる」という形は取れず、実際にはペットを引き取る人や家族に財産を分ける中で、お世話に必要なお金も含めて調整していくことになります。

ペットをめぐるトラブルは感情面から起こりやすい

ペットは家族同然の存在だからこそ、「自分が一番可愛がっていた」「世話をしてきたのは自分だ」など感情的な行き違いが生まれやすいものです。財産分割の話し合いの中で、ペットの引き取りとお金の話が混ざると、思わぬ対立につながることもあります。事前の準備と話し合いが、予防策になります。

遺言書でペットとお金の行き先をはっきりさせる

ペットをめぐる財産分割をスムーズに進めるうえで、有効なのが遺言書を用意しておくことです。誰がペットを引き取るのか、その人にどのくらいのお金を託すのかをあらかじめ決めておけば、残された家族の負担やトラブルを減らすことができます。

ペットを託す人と一緒に費用も指定する

遺言書には、次のような内容を盛り込むことが多いです。
・ペットを引き取って世話をする人
・その人に渡す現金や預貯金の額
・飼育費として使ってほしい旨の希望
このようにペットとお金の両方の行き先を書いておくことで、他の相続人も納得しやすくなり、財産分割の話し合いもスムーズになりやすいです。

負担付き遺贈という形で財産分割を工夫する

より明確にしておきたい場合は、「ペットの生涯にわたってお世話をすること」を条件に財産を渡す、負担付き遺贈という形を検討することもできます。ペットの世話を条件とすることで、他の相続人から見ても公平感が出やすく、感情的な対立をやわらげる効果が期待できます。具体的な文言や金額の決め方については、専門家に相談しながら進めると安心です。

話し合いで決めるペットの引き取りと財産分割

遺言書がない場合や、想定外の事情で内容どおりに進められない場合には、相続人同士の話し合いによってペットの引き取りや財産分割を決めていくことになります。

ペットを引き取る人の負担を理解して分け方を考える

ペットを引き取る人は、今後のフード代、医療費、トリミング代、ペット保険料など、継続的な支出を負担することになります。そのため、次のような工夫をしながら財産分割を決めるケースもあります。
・ペットを引き取る人の取り分を、他の相続人より少し多くする
・現金や預貯金の一部を「ペットの飼育費」として渡す
・高齢のペットの場合は医療費を多めに見積もる
このように実際の負担をイメージしながら話し合うことで、相互の納得感を高めることができます。

第三者や専門家に同席してもらう方法も

感情的になって話し合いが進まない場合には、第三者として専門家に同席してもらうのも一つの方法です。弁護士や司法書士など相続に詳しい人に入ってもらうことで、冷静な視点からアドバイスを受けることができます。ペットの将来を守るためにも、「話し合いにプロを入れる」という選択肢を早めに検討してみると良いでしょう。

ペットと家族のために今からできる準備

ペットの財産分割は、亡くなった後に慌てて考えるよりも、飼い主が元気なうちから準備を始めることが一番の安心につながります。少しずつでも良いので、ペットの将来とお金のことを整理しておきましょう。

日頃から情報をまとめておく

まずは、ペットのお世話に関する基本情報をノートやエンディングノートなどにまとめておくと安心です。
・ペットの年齢や性格、好き嫌い
・持病や服用している薬
・かかりつけの動物病院や連絡先
・毎月のおおよその飼育費
これらを書き出しておくことで、引き継いだ家族がスムーズにお世話を続けやすくなります。

専門家への相談で自分に合った形を選ぶ

財産の額や家族構成、ペットの頭数や年齢によって、最適な準備の方法は人それぞれです。遺言書にするのか、負担付き遺贈や信託を使うのかなど迷ったときは、早い段階で専門家に相談しておくと安心です。ペットと家族の将来をイメージしながら、自分たちにとって無理のない形で準備を進めていきましょう。